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とうに果てた詩情を見ていた

 ぼたぼたと雫が落ちる。壊れた樋からの土砂降りの雨。頭皮に染みて頬から抜ける冷えた感触で、ようやっとそれに気が付いた。
 意識は純真な暗闇のなかだ。頭上を通り過ぎる青空の実体は行方不明で、不快を訴える自らの身体と同じく遠い。奇妙なことに、跨るようにしてのしかかり、睥睨している男のほうがよほど近い。くらくらとまたたく視界で、荒い息をつく彼の仕草だけが精密だった。
「もう一度言ってみろ」
 どこもかしこも傷つけたその挙句、震える拳を突きつける。頬を腫らし痣を張り付け唇と鼻の穴から血を滲ませた彼の顔を、この指先から滴る実体のない痛みでさらに歪ませたかった、のだろう、あえなく失敗しているとしても、そうしたかったのだろう。自分は。
「後悔だと?」相手を待たず自ら反芻した言葉はいまだ舌に甘く、ささくれてひりついた。「してるように見えるか。ああ、そうかもな? で、なんだって? だからって、今、俺のすべきことに、なにひとつ変わりはない!」
 引き絞った喉で言い切ると、一気に渇きが訪れた。眼下に見ていたはずの男の顔がゆっくりと消え失せる――勝手に瞼を閉じかけていることに気が付いて、決然と抗った。ねめつける相手はそれでも動きを止めようとはしない。首筋を掴む手に引き寄せられて、頬に濡れた感触が這わされる。
 呆れて呟いた。
「腹、くだすぞ」
「どうかな。涙かもしれない」言った唇は弧を描かない。真剣にそう思っているとでもいうのだろうか。馬鹿馬鹿しい。
「泥水に決まってんだろ」
 忌々しく吐き捨てる唇に親指が触れた。樋から降り続く水の感触にも増して、他人の体温ははっきりと不快だ。もう目は醒めていた。
「確かめてみるか」
 だからそんな誘いに対しても、「どうせお前の血の味しかしねえ」と断ることができるのだ。

ぼこぼこのけんかもたまにしてたとかそういうの友達っぽいじゃないですか……予想外にちゅうなど要求しちゃいましたけど書き手の頭がおかしいので仕方がありません