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哀れ、哀れ

 どれだけ意味がこもっていようと、それはただの物体でしかない。しかし同時に、ただの物体も、意味が加わるだけで意識の中で形を変える。
(酷い話だ)
 あえて思考を薄ぼんやりとさせたまま、ぐらぐらと揺れる天井を見上げて唇を震わせる。
 腰を支える掌の端にある硬く冷たい感触が、実際の温度とはかけ離れた熱さで肌を灼く。ささくれを無理矢理引き剥がすようなその痛みを、持ち主自身は感じているのだろうか――疑問には思っても、知りたくはない。どうせ忘れ去っているのだろうから。もう彼にとってそれはなくてはならない己の一部で、その場所に収まっていなければおかしいものなのだ。
 酷い話だった。
 いくら物体でもって縛られていたとしても、これが裏切り以外の何なのか。彼らの間に確実にあるものを、どうでもいいと思えないでいることに――この身体と中身すべてを暴き立てようとするくせに、男はなぜかこんな簡単なことには気付かない。
 そろそろ考えたくもない頃合いだった。
 いざ訪れれば胃をひっくり返したい衝動に駆られることを承知の上で、男が崩壊する瞬間をただ狂おしく待っていた。

貴方はオーサルで『忘れられた指輪』をお題にして140文字SSを書いてください。

140文字で書くお題ったー
胃が痛い(そんなもん書くな)